「象・腐った魚・嘔吐」をする時のお作法
「象・腐った魚・嘔吐」をする時に考えていること


昨日の記事に続いて、せっかくなので「象・腐った魚・嘔吐」をするときのお作法を書いていこうかなと思います。
メンバー招集前
ここの目的
主催者の独り善がりにならない(参加者を受け身にさせない)ために下準備をします。
何をやるか
「象・腐った魚・嘔吐」をする前に、「なぜやるのか」という目的の共有をします。
どうやるか
課題や目的を共有します。
目的がないと参加者は「なんでやるんだろう?」という気持ちになってしまい、なかなか場に集中することができなくなります。
目的として掲げる課題感の事実確認、収集を怠らないようにしてください。この収集を怠ってしまうと「あの人が勝手に感じているだけ」「あの人の問題」というふうに捉えられてしまい、改善が行いにくくなる可能性があります。
例
- プロジェクトにおけるコミュニケーション不足による手戻り
- チーム内の不和による開発速度の低下
- トップダウン構造による業務負荷の偏りとボトルネック
事前準備
ワークショップは事前準備が9割です。
ここの目的
ワークショップを実施後にどうなっていたいのか、を想像しつつその状態を実現するためにはどう設計するかを考える。
何をやるか
ホワイトボードに下準備としてボードを装飾したり、凡例を書いたりして、参加者の対話がより促進されるようにする
どうやるか
ホワイトボードツール(または、ホワイトボード)は必ず使うようにしましょう。もしここの準備を行わずに文面や口頭でやろうとしないでください。人vs人の構図から人vs問題の構図にするにはホワイトボードが効果的です。
ホワイトボードには事前にワークショップの準備をしておきましょう。枠線とテキストだけのボードはなるべく避けましょう。「楽しさ」は場をつくる上で最重要項目です。その場が「堅い」と感じられてしまった途端に対話は行われなくなりあす。「楽しさ」を表現できるようにボードの準備をしましょう。
また、ボードには「楽しい」以外にも「親切さ」があるとより対話が促進されます。
「親切さ」として、このアクティビティは「何のためにやるのか?」「何をやるのか?」「どうすればいいのか?」この3つが揃っていると口頭説明を聞き逃した参加者にとっても親切で、より対話に参加しやすくします。
例
- このワークの目的、やり方、ポイント
- ボード内にかわいいイラストを貼ったりちりばめる
- してほしい行動を書く
- このワークでやってはいけないこと(否定するなど)を共有する
チェックイン
ここの目的
"場に自分は参加している"という実感を沸くように促します。傍観者になる人を出さないように配慮します。
何をやるか
簡単に声を出せるワークを挟み、早い段階で場への参加を強制的に行なう。
どうやるか
まずワークショップを始めたらアイスブレイクを行います。このアイスブレイクにも意味があります。時間がないから省略をしないように気をつけてください。
このアイスブレイクは木を切るために歯こぼれした斧を砥ぐようなもので、時間をかけすぎず、短かすぎないように気を付けます。
ここのチェックインで声を出すかどうかで、その人のその後のワークショップへの参加度(発言率など)は大きく変わります。
ワークの中身と関わる内容が好ましいですが、慣れないうちは関係のない簡単なワークでも良いです。
声を出すのが目的です。書き出して「はい終わり」ではありません。必ず全員が声を出せるような仕組みにしましょう。
例
- 今の気持ちを漢字一文字で表現すると?
- 今の気持ちを天気で表すと?
- 今の気持ちを動物にたとえると何?
本ワーク(象・腐った魚・嘔吐)
ここの目的
個人が認識している課題や、個人が秘めている課題を共有すること
※改善アクションの計画までやるかはここの責務には入らない
何をやるか
下記のフレームで問題を捉えて吐き出します。
- 「象」...見て見ぬふりをしている大きな問題
- 「腐った魚」...放置しておくと大変なことになる問題
- 「嘔吐」...言わないようにしている本音や問題
どうやるか
考える時間と共有する時間は分離させた方が良いです。考えながら話す等はあまり思考が深まらずに表面的は話になってしまう可能性があります。
大前提として、「他の人の意見を否定しない」「評価しない」「聞かない」等の行動も避けるようにしましょう。
人数が多い場合は共有する(話す)時間にグループを分けるのも有効です。誰かだけがたくさん喋って、誰かだけがずっと黙っているということがないように気を払いましょう。
書いた内容を共有する際は「なぜそう思う/感じたのか, そこにある感情, 過去の経験」を交えて共有するように促せると、より相互理解が深まります。
また、「その問題がどうなると良いか?」という未来志向の話もできるとより、チームが明るく、問題に対して前向きになることができます。
例
- 考える(5分)→4人から5人のグループで共有する(20分)→お互いに話した内容を共有する(5分)を3セットで90分程度のワークにする
- 最初から少人数のグループに別れて、3つの項目に対してグループに委ねる。45分経過したら、別のグループと数人ずつ交換し、他のグループで何を話したのかを共有する
チームで取り組める改善テーマを決める
目的
粒度がバラバラの問題に対して、より抽象的でチームで取りくめる改善テーマを決める
何をやるのか
話した問題の中で、一番重要そうな問題を決めます。技術的なより具体的な話よりも、チームやプロセスといった抽象的な部分の方が全体最適解になりやすく、チームで取り組みやすいです。
どうやるのか
投票や推薦形式などを駆使して、一番重要そうな問題を得らびます。各々が重要そうだと感じている問題に対して好きに投票してもらう形式でも良いです。
多数決でも良いですが、なるべくチームで取り組みやすい内容で、メンバーであれば誰でも貢献ができる改善テーマがオススメです。
ここで全員の合意を取った改善テーマは、次週以降のふりかえりの場で話すテーマとして使うことができます。
例
- チームの関係性が良好ではなく、コミュニケーションが少なくなっている
- チーム内で分業が進み、誰が何をやっているのかがわからなくなっている
- 何のために開発をしているのかが分からなくなっている
- 言われたことをただやるだけの開発になっていて、作業になっている
- 要求から決められた要件が曖昧で、開発の手戻りやバグが発生している
チェックアウト
目的
参加者が場を通じて、何を考えたかの内省を促す
何をやるのか
参加者自体が「この場があり、どう感じたのか」を共有する
どうやるのか
数分で終わる簡単なチェックアウトを用意します。このチェックアウトを通して、自分がこの場で何を話したのか、何を考えたのか、他の人はどう考えていたのかを内省する時間にします。
場に対するフィードバックの収集が目的ではありません。あくまでも参加者がこの場を意味付けするために実施します。
例
- 話し合いが終わった今の気分を天気に表わすと何?
- この場で「よかったこと」は何ですか?
- この場において自分はどういう振る舞いをできましたか?
- 「たくさん話せた」 or 「たくさん聴けた」or 「他の人の課題感を知れた」or 「場にうまく参加できなかった」
最後に
つらつらと書きましたが、ここには書けなかった他にも気を付けるポイントはたくさんあります。
しかし、実践以上に得られる知はありません。
その場の参加者の対話をよりどう促進させるか?
このただ1つの問いに対して真摯に考え続けることができれば全員にとって良い場になると思います。